2016年10月18日放送
北海道大学教授の舩橋誠先生をゲストにお招きし、食べることと脳のつながりについてお話をおうかがいました。
岡山生まれ、岡山育ちで、所長とは大学時代のクラスメイト。
学生時代のアメリカ旅行で、数々の研究所や野口英世の足跡をたどった結果、臨床医ではなく基礎研究者としての道を選ぶ。
現在は北海道大学歯学部教授で、食欲と脳の関係について研究している。
ここ20年ほど、小・中学校でも「食育」という教育科目がはじまっていますが、この基になっているのが、「食と脳」に関する分野の考え方です。
基本的に、「食欲」を調節しているのは「脳」です。人間は脳からの指令で空腹感・満腹感を感じることで、食事を始めたり・終えたりすることができるのです。これは、ヒトも他の生き物も同じ、共通の仕組みです。
ただし、実は人間は環境によって「食欲」が変わる生き物でもあります。
例えば、満腹になってもおいしそうなケーキを見るとまた食べたくなりますよね。「甘いものは別腹」と言いますが、これはホルモンの働きにより、実際に胃に隙間ができることが解明されています。そして、甘いものを食べて「美味しい」と思うと、さらに隙間ができるので、どんどん食べられるというわけです。
おいしいものを見るとつい食べ過ぎてしまうというのは、仕方がないことかもしれませんね。
食べる事と心の関係を証明することは、食事によってどのぐらい幸せになったかを計る必要がありますので、非常に難しい分野でもあります。
今から丁度20年ぐらい前に、福山大学の鈴木雅子先生が中心となり、中学生にアンケート調査を行ったことがありました。具体的には、食生活が良いか悪いかについて点数を付け、さらに「イライラする」「カッとなりやすい」等の心の状態についても同時に調査したそうです。
その結果、毎日朝ごはんを食べていたり、家族と一緒に食べているといった良い食生活が送れている生徒ほど、イライラしたりする率が少ないということがわかったそうです。逆に悪い食生活の生徒は、「すぐカッとなる」「死にたいと思うほどつらいことがある」等と答えた割合が多かったという結果になりました。
この結果を鵜呑みにすることはできないかもしれませんが、そういった調査を踏まえた結果、現在では食育が重要視されるようになりました。
食べる事から始める、食は基本といった言葉もよく言われていますが、ただ食べるだけではなく、誰と食べるか、どう食べるかといったことも健康に強く影響しています。
特に人間は、一緒に食べる人が多いとたくさん食べられるという調査結果もあります。
逆に、近年の核家族化の影響で、高齢者の方が1人で食事をしているという場合には、食べる量が少なくなり、結果的に栄養不足になってしまうということもあるのではないかと考えられます。
実際に独居老人の方が、気の合う友人がいる老人ホームに住まいを変えた場合に、すごく元気になったというケースがありました。調査してみると、住まいを変えた後には、非常に食事量が増えていたそうです。友人と一緒に楽しく朝、昼、晩、ご飯が食べられるということが、健康につながったという例ですね。
この方に限らず、一緒に食べる人の影響というのはかなり大きいのではないでしょうか。
このお話の続きは、また次回のラジオきのこらむ(第15回)でお伝えします。