2017年02月21日放送
今回は東京農業大学・江口 文陽(えぐち ふみお)教授に、はるばる東京都から岡山県までお越しいただきました。きのこに関する素朴な質問について、様々なお話をおうかがいしていきます。
東京農業大学 教授。
「食と農」の博物館 館長。
独立行政法人日本学術振興会 学術システム研究センターの専門研究員。
専門領域は森林保全、木材の有効活用、きのこの利用法の開発というきのこの博士。
浅野産業㈱の総合研究所では、約10年前から研究所の顧問として現在も活躍中。
きのこといっても、作り方…例えば原木で栽培する、菌床で栽培するといった「培地(ばいち)」の状態によっても栄養成分というものは少し変わってきます。
基本的な栄養機能、成分といったものは大きくは変わりません。しかしながら培地の中に例えば「カルシウム」や「鉄」といった私たちが取り入れなければいけないようなミネラルを入れてあげると、きのこがそれらの成分をちゃんと吸い上げてくれて、適正な量の中で多く含むといった性質があります。
ですから、菌床の中に栄養を入れることによって、栄養がリッチなきのこを生産するということも現在では可能になっていますね。
まず、きのこが生で売られている場合は「生鮮食料品」です。であれば、鮮度の良いものを買っていただくということが一つのポイントになります。
魚や肉と一緒で、きのこもだんだん古くなることによって栄養機能成分が少なくなってしまいます。そうすると私たちがせっかく同じお金を出しても、その成分が少なくなれば体には良くないということですから、成分が非常に豊富な鮮度の高いもの…まさに近くでとれた日本国内のもの、あるいは岡山県内であれば浅野産業さんのきのこを食べていただくというのがベストですね。
まずは生産地の表示を見てもらって、例えばシイタケであれば逆さにしてヒダを見て、ヒダがシャキンたっていて、茶褐色に色が変色していないもの。そして、瑞々しくてプリプリ感があるシイタケなんかが栄養価が高いということが言えますね。
それはありますね。基本的にきのこも野菜と同じように生鮮食料品ですから、賞味期限・消費期限というものがパッケージに貼られているということはないんですね。ですから買ってきた後には痛む前に食べるということが、きのこの一つの旬と言えると思います。
どんどん鮮度が落ちていけば、それだけ栄養機能成分は落ちるわけですから、買ったらすぐに食べるというのが一番です。
もしもすぐに食べられないようであれば、まずは冷蔵保存です。もっと長く食べることがないというときには干してしまう、あるいは冷凍にしてしまいます。
ぶなしめじやエリンギなどは冷凍には不向きですが、シイタケやエノキタケなどはそのままの形で冷凍し、料理しても問題ないきのこです。
すべてのきのこに対して言えますが、冷凍するのであれば、まず「どんな料理に私は使うのかな」ということを考えていただいて、きのこをその料理に合わせた大きさに切り、冷凍します。そして、冷凍庫から出したときには、じわじわ解凍するのではなくて、きのこを冷凍したまま鍋に放り込んで調理します。
すぐに料理に使える状態にカッティングしてから冷凍する。そうすれば、色々なきのこをうまく冷凍して、長期間保管することができますね。
生産者によってということですが、どんなきのこ(種菌)を使っているかということがあげられます。
例えばお米にしてもコシヒカリ、ササニシキといった色々な銘柄や名前があり、味が変わってきますよね。ですから同じように、シイタケの「種」にも色々な種類があるんですね。だから私は料理屋さんに行ってシイタケが出てきたときに、シイタケとは言わないで、菌株名で呼んだりしています。
そうですね。ジャンボシイタケというものは非常に手間もかかりますし、培地の栄養素もシイタケがたくさん吸い上げるものですから、あまり量がたくさんとれるわけではありません。生産技術が非常に高いと言えますね。
大きいシイタケは、小さなシイタケと比べて一つ一つの細胞が大きいわけではなくて、細胞の大きさはほぼ同じなんです。そして大きく成長しているわけですから、非常に味がしまっていて、食べたときの食感が良くなります。
また、肉厚なのでダシで煮込んだときに料理の味が中まで伝わらないということから、逆にキノコの味をしっかり感じられて、食べた時に旨みを感じていただくことができるのかなと思います。
国産のキクラゲは最近では全国的に増えてきてはいますが、浅野産業さんの作っているキクラゲは非常にクオリティが高いということで、私は評価していますね。
生で食べられるキクラゲは海外からはほとんど入ってこないと思います。ですから生で食べるということであれば国産だけですね。それから干したとしても、やはり誰が作っているのかというところがわかるものを食べる、生産者の顔が見えるということが、安心感につながるのではないでしょうか。
(後編)きのこ博士が語るきのこ愛と、ちょっぴりディープなきのこの世界
弊社の場合はきのこを作る工場を2つ持っておりまして、第二工場は森のようなところにあり水道がないんですね。ではどうやって水を使っているのかと言いますと、井戸を掘り、井戸水をくみ上げて、フィルターでこして、それから消毒もして使っています。
使う前の水は定期的に外部の検査機関に出して、ほぼ飲料してもいいぐらいの純度にした上できのこの栽培に使っています。実は社内でも実際に飲んでいらっしゃる方もいるんですけどね。
それから栽培に使っている木材も全て産地証明をとっておりますので、原材料につきましては種菌も含めて安心してめしあがっていただけるように、いわゆるトレーサビリティーというものを担保している工場になっています。
現在は地産地消、産直というものがはやっています。やはり消費者の方々にとっても「新鮮なものはおいしい」という実感があると思うのですね。我々も玉野市で作っておりますので、まずは岡山県内でたくさん普及してほしいと思っています。