column

2017年01月17日放送

【ラジオきのこらむ】part.20 倉敷市の老舗醤油店「とら醤油」へ工場見学に行ってきました!

今回のラジオきのこらむは、倉敷市酒津にある江戸時代から続く老舗のお醤油屋さん・とら醤油からお届けします。

醤油もキノコも「菌」から生まれる

醤油や味噌などの食品と、シイタケなどのキノコは、どちらも菌を使って作られている食品です。味噌や醤油の菌類は、「酵母」という丸い菌を使っており、浅野産業で育てているキノコは「糸状菌」といって糸状の菌から生まれています。どちらも菌の力を借りて商品を作りますので根本的には同じです。

実はとら醤油さんには、浅野産業で作られたシイタケを使ったコラボ商品「椎茸しょうゆ」を、数年前に開発していただきました。そこで今回はそんなご縁もあり、とら醤油さんの醤油作りの現場を見学させていただきました。

とら醤油と浅野産業のコラボ商品「椎茸しょうゆ」 とら醤油と浅野産業のコラボ商品「椎茸しょうゆ」

歴史ある醤油工場をじっくり見学!

醤油を作るのに必要な1回あたりの原料の使用量は、大豆1350キロ、小麦1350キロ。
原料を加工する加工場では、「麹(こうじ)」というものが作られて、そのとなりの部屋で「醪(もろみ)」というものが作られます。麹を作るための加工には3日間かかり、その後、塩水と一緒にもろみタンクに入ります。

醤油の原料となる大豆や小麦。 醤油の原料となる大豆や小麦。
麹を作る部屋には大きな機械が並ぶ。 麹を作る部屋には大きな機械が並ぶ。

もろみタンクの深さは3メートルにもなり、1つのタンクからは1.8リットル(一升瓶サイズ)の醤油が、約1万2千本とれると言われています。

この部屋には「家つき菌」という菌が付いており、1つ1つのタンクにも「タンクつき菌」という菌がいて、醤油作りではその菌が活躍できるようお手伝いをするのが仕事です。

深さ3メートルにもなるもろみタンク。 深さ3メートルにもなるもろみタンク。

それぞれのタンクに同じように材料をいれても、タンクについている菌が違うので、1つとして同じ数値は出ません。毎年成績が良いタンクからは良い醤油ができやすいのだそうです。

醤油は非常に「酸化」しやすい食品で、表面がどんどん酸化して色が濃くなっていきます。また、放置したままにしていてはカビも生えてしまうので、その防止のために長い棒を使ってかき混ぜながら醤油を作っていきます。

タンクの中には、もろみのプールが広がる。 タンクの中には、もろみのプールが広がる。

続いて、先ほどのもろみをプレスして押しつぶし、圧力を加えてしぼる「圧搾(あっさく)」という作業をする場所になります。
ここでしぼったもろみは90%が「気揚げ(きあげ)」という醤油になり、残りの10%はカスになります。このカスは捨てるとゴミになってしまいますが、とら醤油では牛の飼料としてリサイクルされます。

巨大なプレスする機械。搾った後のもろみはペラペラの板状に。 巨大なプレスする機械。搾った後のもろみはペラペラの板状に。

続いて「ろ過」という工程。上から85℃ぐらいの温度で醤油がタンクに降りてくるのですが、ここで初めて「おり」という廃棄物が出てしまいます。「おり」とは、今まで頑張ってくれた麹菌や乳酸菌、酵母などのこと。これらに熱を加えて殺菌をし、取り去るのが「ろ過」という工程になります。

それぞれのタンクには醤油が詰まっており、ひときわ醤油のにおいが香る。 それぞれのタンクには醤油が詰まっており、ひときわ醤油のにおいが香る。

そして最終工程では、醤油を詰め、ラベルを貼ります。できたての醤油は、いわゆる赤橙色(せきとうしょく)といって、赤色をしています。醤油は「生き物」ですので、空気にふれることでどんどん酸化し、だんだんと色が濃くなり、風味が落ちてしまいます。そこで、空気にふれないよう保存の仕方に注意すると、家庭でおいしい醤油が長く楽しめるのだそうです。

自動で醤油が詰められ、ラベルが貼られていく。 自動で醤油が詰められ、ラベルが貼られていく。

※今回は作業工程を短時間で順番に見せてもらいましたが、実際に醤油ができるまでには麹に3日間、もろみに6カ月ですから、最短でも6カ月はかかるそうです。

とら醤油社長・三宅正記(みやけまさき)さんインタビュー

―とら醤油さんは、本当に長く歴史があると思いますが、いつ頃からでしょうか。

私どもが創業いたしましたのが、1860年(万延元年)で、江戸の終わりなのですが、その頃からここ酒津の地で醤油醸造をしております。

―倉敷市酒津という場所は醤油造りには適した場所なのでしょうか?

今は酒津公園がすぐそばにありますが、当時は高梁川が2つあり、東高梁川という川が流れていました。東高梁川の良質な水というものも醸造にも良かったですし、当時は船でものを運ぶというのが主流でしたので、大豆や小麦といった原料を運んだり、できあがった商品を運ぶという面でも、川沿いというのは非常に良かったと聞いております。

とら醤油の三宅正記社長。 とら醤油の三宅正記社長。

―とら醤油のイメージとしてはラベルの虎マークが印象に残っていると思うのですが、あのマークには何か意味が込められているのでしょうか?

とら醤油を株式会社化した、4代目の三宅次平(みやけじへい)という者がおります。ある日次平が近くの吉備津彦神社さんに商売繁盛するにはどうしたら良いかと聞きに行きまして、十二支を円形に並べ、自分の生まれた干支の反対側の干支(裏干支)を大事にすると良いと言われたそうです。
次平は生まれが申年だったもので、その反対が寅でした。そこでまずはトラを大事にしようということで、ブランド名に「とら醤油」というものを作り、販売を始めます。やがて三宅醤油という名前よりも「とらさん、とらさん」と声がかかるようになりまして、昭和25年の寅年のときにいっそのこと社名もとら醤油に変えてしまおうということになり、今に至るというわけです。

―古きよきものを大事にしながらも新しいことに挑戦しているという姿が見受けられます。

地域の方々に愛されて、今まで商売を続けてこられたということは間違いありません。その中で醤油屋が醤油だけ作っていただけでは商売が立ち行かないといいますか、厳しいこともございました。
そこで、地元のもの、地元のいいものを利用・加工し、販売にも地域の方々の力を借りながら、いろんなところに挑戦しています。特に地域の特産・名産を使った「黄ニラ醤油」や「パクチードレッシング」といったものにも取り組んでいます。

多目的ホールには歴史を感じる写真の展示も。 多目的ホールには歴史を感じる写真の展示も。

―地元の食材とコラボレーションして地域を盛り上げる活動にも力を入れているんですね。

そうです。地域とのコラボレーションということを大事に思っていまして、浅野産業さんのシイタケを使った「椎茸しょうゆ」というものも作らせていただいております。
今後も色んな企業様、それから地域の農作物を作っている方々と連携し、取り組んでいきたいと思っております。

―江戸時代の末期からということで、私たちの想像もつかないぐらい長い間醤油一筋にやって来られたと思うのですが、今後の思いを教えていただけますか。

長い歴史の中で、本当に地元の方に愛されてきたのがありがたいことだと思っております。その中で地元のいいものを、日本国中であったり、それからまた海外にもしっかりPR・宣伝していければと思っております。
私どもの社業発展ということもあるのですが、岡山、それから倉敷にもいいものがたくさんあるので、そういったものを皆さん方に知っていただき、また食卓に取り入れてもらえるよう挑戦したいです。
例えば倉敷のデニムなんかとも一緒にからめないかということも考えております。今後も地元企業の方々、地元の方々と歩んでいきたいと思っております。

―「椎茸しょうゆ」も楽しめるお店が、工場の近くにあると聞きました。

そうです。酒津公園のすぐ脇になりますが、「倉敷茶房 桜花」というところで、とら醤油の商品を使った様々な料理をめしあがっていただけるように、準備をしております。

※次回のラジオきのこらむは、とら醤油が運営している倉敷市のカフェ「桜花」からお届けします。(次号は2017年2月7日放送予定)

とら醤油へ工場見学に行こう!

とら醤油では、事前に予約をすれば誰でも工場見学に参加することができます。見学に参加した方には、記念品として黄ニラ醤油のお土産付き。皆さんもぜひ実際に、しょうゆができる現場を訪問してみて下さい。
≫詳しくはこちらから。

とら醤油×ラジオきのこらむ特別プレゼント

ラジオきのこらむの放送を記念して、合計12名様に弊社の岡山県産シイタケと瀬戸内産のいりこを使ったダシ醤油「椎茸しょうゆ」をプレゼントします。
≫詳しい応募方法はこちらから。