2015年08月11日放送
暑い日が続きますが、夏バテなどされておられないでしょうか?今年は8月8日が、二十四節気の立秋、季節の上では既に秋に入りました。これから食欲の秋ということで、岡山の郷土料理「ばらずし」についてお話したいと思います。
ばらずしの伝承は諸説ありますが、一番有名なのは備前岡山の藩主・池田光政侯に由来するお話です。
江戸時代、池田光政侯は質素倹約を奨励し、「食事は一汁一菜とする」というお触れを出しました。一汁一菜とは、主食(ご飯)に汁物1品と菜(惣菜・おかず)1品を添えたシンプルな献立のことです。
そこで、お祭りなど特別な日にはごちそうが食べたい町人たちは、「すしの上にうまいものをぎょうさんのせよう。それでも一菜だ」と考えます。こうして魚や野菜をすし飯に混ぜ込み、見た目は一汁一菜ですが、中にはたくさん具が詰まった「ばらずし」を作りました。この海の幸・山の幸を盛り込んだ豪勢な「一菜」が岡山の味となり、「(岡山)ばらずし」等と呼ばれて現代にまで受け継がれるようになったのです。
この他にも、鎌倉時代に福岡(現在の瀬戸内市長船町)の宿で、五目飯に熟成した酢が偶然入って、美味しいすしが生まれたという伝承や、代々受け継がれてきたばらずし作りが下手なので、姑から叱られて離縁されてしまったという伝承も残されています。いずれも古文書などによる確実な裏付けはないのですが、ユニークな言い伝えですよね。
岡山のばらずしの特徴は、何といっても具材の多いことです。ご飯には岡山の名物「鰆(さわら)」の締め酢を混ぜ込み、そこにレンコン、ゴボウといった根菜類をカンピョウや干しシイタケのおいしい戻し汁で煮込んだ具材を加えます。
シイタケには、日本人が伝統的に知っている旨み成分の一つ、「グルタミン酸」が多く含まれており、このシイタケの戻し汁で煮込むことで、美味しい具材が出来上がるのです。
そして、飾りには、エビや生姜等の赤色、エンドウやミツバ等の緑色、シイタケの黒色、錦糸卵の黄色、かんぴょうや穴子の茶色等、色鮮やかな具材を盛り付けて華やかに仕上げます。
こうしてきれいに飾り付けられた「ばらずし」は、岡山では「ハレ(晴)」の日に欠かせない定番料理でした。お正月、桃の節句、端午の節句、お彼岸、お盆、結婚式、棟上げなど、機会があるごとに作り、食べられていたそうです。
また、作ったばらずしを重箱に詰めて、ご近所や親類、お世話になった方におすそ分けし、絆を深めるコミュニケーションツールとしても役目を果たしていたようです。そういった歴史を踏まえて、岡山の食文化のひとつとして、「ばらずし」は農林水産省の「農山漁村の郷土料理百選」にも選定されています。
元々「ばらずし」は各家庭によって独特の味があり、季節によって具の取り合わせも変化するアレンジ豊かな料理です。ところが残念なことに、近年核家族化が進んだせいか、自宅でお寿司を作る家庭もめっきり少なくなってしまいました。
以前、私たちが地元・玉野市内の全ての保育園と幼稚園を対象に、シイタケを育てる食育学習を行っていることをご紹介しました。 (詳しくは第3回の「きのこらむ」をご覧ください)
食育では、健全な食生活を行えるような人間に育てることを目的に、日本の食文化を理解し、伝えることができる力も重視しています。岡山の伝統的な郷土料理である「ばらずし」をご家族で食べることは、まさしく「食育」の一環とも言えます。
私たちも 、郷土の味を伝えていきたいという思いで、白ごはんに混ぜるだけで酢飯が作れる「ばらずし」 の素を作っています 。あくまで岡山の味にこだわって試作を重ねた結果、ご年配の方からは「昔から自宅で作っていたばらずしの味にそっくり」等のありがたい評価をいただくまでになりました。また、具材は全て国産のものを使用しています。皆さんもお盆に里帰りされた際には、自分の家に伝わるばらずしには何が入っているのか、ご両親から作り方を教わるのも面白いのではないでしょうか。
ユネスコ無形文化遺産にも登録され、今後も注目が高まる「和食」の文化。私たち岡山県民も、「ばらずし」を岡山の郷土料理として、これからも後世に伝えていきたいですよね。
暑い夏が過ぎると食欲の秋に入りますので、今回紹介した「岡山ばらずし」 の素、そしてばらずしの具材としても活躍する「シイタケの旨煮」、「わさびシイタケ」の3点をセットでプレゼントします。皆様ぜひご応募ください。(応募は終了しました)
ばらずしの素は、酸味をきかせた味わいですので、お子様には少し酸っぱいという場合もあるかと思います。酸味を抑えて作る時のポイントは、炊き立てのご飯にばらずしの素を混ぜた後、時間を置いて冷ましてからいただくことです。酢は時間が経つほどだんだん抜けていくので、少し時間をあけるだけでも酸味が控えめになります。
それでも酸っぱいという場合は、ご飯にばらずしの素を混ぜる際に、砂糖をお好みで大さじ1~2加えてみてください。飾りつけに甘い錦糸卵を作るのもおすすめです。
次回は、秋本番の9月になりますので、生シイタケの食としての魅力についてお話したいと思います。